皆さん、おはようございます。【自衛官(公務員)のための営業職入門】も16日目となりました。本日は第3章「テレアポの成否は準備で決まる」の四回目です。テレアポの成否を決める準備とは、リスト・台本・環境の3つでした。今日は最後の一つ、環境について解説します。

テレアポに専念できる環境をつくることは、重要です。環境整備は、経営者や営業部長の仕事だと言えます。山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉がありますが、営業の責任者こそ、この名言を思い出していただきたいと思います。本日の内容は、どちらかと言えば営業マン向けではなく、上司に向けたアドバイスになります。

なぜ環境が大切なのでしょうか。それは当然、テレアポの質と量を向上させて、アポイントを獲得するためです。電話をかけている「相手」に意識をフォーカスすることが大切です。ところがテレアポの初心者は「テレアポをしている自分を見られたくない」と感じる人が多いのです。職場の上司・先輩に、意識が向いていると、テレアポに集中できません。私も新卒の時はそうでした。出版社に就職し、創業社長の直属の部下として、新規事業開発に従事していました。社長はテレアポの手本を見せて指導してくださり、尊敬している上司で一緒に仕事をさせていただいて嬉しかったのですが、それでもテレアポを横で聞かれるのだけは嫌でした。

このような私ですので、「テレアポをしている自分を見られたくない」という気持ちは、よくわかります。それにしても、なぜ「テレアポをしている自分を見られたくない」と感じてしまうのでしょうか。この理由は、自分の未熟な状態、下手くそでオタオタしている状態を見られたくない、という心理があります。スポーツでも趣味でも、なんでもスタートしたときは初心者です。ヘタなのは当たり前で、だからこそコーチや先輩が指導してくれるわけです。

ところがテレアポの場合は、初心者であるにも関わらず、いきなりテレアポをさせられるわけです。具体的なノウハウや、丁寧な指導があれば別ですが、「気合いでがんばれ、早くアポを取れ」とプレッシャーをかけられると、テレアポが嫌になって当然です。このような心理状態でテレアポをすると、ガチャ切りを数件くらうだけで、相当凹みます。アポイントの数も伸びず、テレアポが嫌いになり、辞めていく新人が多いのです。

それでは、テレアポについて懇切丁寧に指導してくれて、新人でもテレアポで活躍できる職場、つまりテレアポの環境が整備されているのは、どこでしょうか?それがコールセンター、つまり通販企業やテレアポ代行業者の職場です。前述のとおり、私も3ヶ月間だけ、電話で生命保険を売る会社でアルバイトをしました。コールセンターでは、全員がヘッドセットを装着してパソコンに向かい、50分間テレアポ・10分間休憩を繰り返していました。新人も初日から目標を設定されており、休憩時間以外は全員、必死にテレアポしていました。この企業は全国でもトップクラスに生命保険を売っていました。全員が同じ姿勢で、同じ目標に向い、同じ時間帯にテレアポをするから、新人でも活躍できる環境だったと言えます。こういうコールセンターで働くと「テレアポをしている自分を見られたくない」という意識は、ありません。

というわけで、新人でもテレアポができるようになる環境を構築するためには、コールセンターに学べば良いのです。一般の企業でも簡単に導入できるのは、次の三点です。①適切な目標設定、②ゲーム感覚、③開始時間を決める、です。詳しく書いていきます。

①適切な目標設定・・・まず不適切な目標設定をお伝えします。それは「アポが取れた件数だけを数えること」です。法人営業の新規営業において、担当者の名前を聞き出すことや、資料を送付することには、大きな価値があります。なぜなら、時間さえかければアポイントにつながるからです。ですから、適切な目標とは、「担当者の名前を聞き出す・資料を送付する・アポを獲得する」この三段階にすることです。

②ゲーム感覚・・・競争心をあおることは大切です。大人も子供も、ゲーム感覚で競争することは大好きです。自衛隊の訓練でも、税務署や警察署でも、同僚と競い合うことは日常的に行っていらっしゃるかと思います。私の場合は、後輩にテレアポを指導する時、定期的にテレアポ大会を開いていました。後輩たちに「今週のテレアポMVP」を競わせ、勝者にランチやアイスをおごっていました。担当者の名前を聞き出せたら3ポイント、資料を送付できたら5ポイント、アポイントを獲得できたら20ポイント、このような感じで楽しくやっていました。

③開始時間を決める・・・スタート時間を決めることも重要です。例えば「毎朝9時から1時間」など時間を区切って、営業マン全員でテレアポをするのです。みんなでやれば、部活のような楽しさがあるし、新人特有の「テレアポをしている自分を見られたくない」という不安もなくなります。とにかく、「上司はテレアポをやらず、若手だけテレアポをやらせる」という環境が、もっともモチベーションを下げるのです。テレアポの開始時間を決めると共に、終了時間も決めると良いでしょう。ちなみに私がアルバイトをしたコールセンターでは、休憩時間の前と後に、みんなで「パーン!」と手を叩き、意識をリセットすることが儀式になっていました。

ところで、下記コラムは経営者や営業部長向けに準備していた文章です。【自衛官(公務員)のための営業職入門】は、文字通り営業の未経験者向けに書いているのですが、なにかの参考になれば幸いと思い、ここで公開しておきます。

コラム;なぜあなたの部下はテレアポをやらないのか

このコラムでは、経営者や営業部長の悩みに回答したい。中小企業に新規営業に行くと、社長や取締役と商談になることも多い。その時に「うちにも君のような営業マンが欲しい」「うちの部下はテレアポをやらない」「忙しそうで新規営業をやらせるのも申し訳ない」このような愚痴をこぼされることが多かった。特に、新卒採用をやっていない企業で、この手の相談が多かった。それでは、なぜ、あなたの部下はテレアポをやらないのだろうか?

営業マンは、平気で「忙しくてテレアポをする暇がありません」と言うだろう。実際、外回りや書類作り、社内調整に追われている。「毎日が残業なのに、テレアポなんてできるか!」というのが営業マンの本音だろう。デザイン会社時代、テレアポが大好きな私でさえ、1日60分のテレアポタイムを確保するのがやっとだった。テレアポが嫌いな営業マンを放ったらかしにしていたら、多忙を理由に誰もテレアポをしない組織になってしまう。

社長や営業責任者こそ「指揮官先頭」という言葉を思い出して頂きたい。そもそも、「営業マンの気が向いた時だけテレアポする」という体制では、営業マンのモチベーションは上がらない。それに、組織として継続的に新規営業を続けていくことは難しい。テレアポが苦手な営業マンは、とことんテレアポを避ける。

特効薬がある。営業部にテレアポ大会をやらせて、営業責任者が参加することだ。責任者が参加するだけで、営業マンのテンションがあがる。キーマンは、最初の5分だけでも良い。責任者が率先してテレアポする姿を見せる。背中を見せるだけで、営業マンの気構えがが変わる。「そんなのは、営業マンの仕事だ、そのために雇っている。」と言われるお気持ちはわかる。100%その通りだ。しかし営業マンのテンションを上げるためには、背中を「魅せる」ことが最速であり最善である。

山本五十六も「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」と言っている。軍規が厳しい大日本帝国海軍の軍人でさえ、動かなかったのだ。現代のサラリーマンなら尚更だろう。

私は様々な企業で新規営業を経験した。なかでもデザイン会社は、業績絶好調で毎年社員が増え、増収増益だった。創業社長と取締役の新規営業スキルがダントツだった。テレアポをやって当たり前、新規営業をやって当然、そのような空気があった。リーダーが「指揮官先頭」を実践されていたので、社員も必死に新規営業をやっていた。ぜひテレアポ大会を試して欲しい。