みなさん、おはようございます。【自衛官(公務員)のための営業職入門】も9日目となりました。本日から第2章「新規営業とは、知的な総合格闘技~電話・訪問・文書~」に入ります。この章タイトルは、私自身が新規営業の現場で心がけていたことです。

私が書くのは法人営業に関するノウハウですが、新規営業の目的は新たな顧客を探すことです。そのためには、見込み客(自社の商品・サービスに興味を持つであろう、潜在的な顧客)を探さないといけません。見込み客であるか否か、もっと言えば案件(見積書を提出するチャンス)があるか否かを判断するには、相手に会う必要があります。そのためにはアポイントを取らなければいけません。新規営業のアポイントを取ることは難しく、これが新規営業が嫌がられる最大の原因です。

電話でアポを取ろうとすると「けっこうです、ガチャ」とガチャ切りされる、飛び込み営業やっても相手にされない、文書を送っても相手にされない、それでも上司から「早くアポを取れ」と急かされる。いったい、どうすればアポ(アポイント)が取れるのか?

アポを取るノウハウを教えてくれる上司なんて、そうそういません。「気合いだ根性だ、やる気あるのか」という上司にあたると、疲弊して辞めたくなります。もっとも、そういう上司が多いからこそ「アポを取る才能しか無い、それ以外は平均未満」という私でも、営業職として評価されたという現実もありますが・・・

ともかく「電話と訪問と文書をミックスすれば、簡単にアポがとれる」というのが、私が出した結論です。ミックス戦略はシンプルにして最強。アポイントがたくさんとれれば、営業成績も間違いなく上がります。上司から間違いなく評価されます。

アポイントさえ取れれば、新規営業は楽しいのです。「アポを取れるか否かで、営業職を楽しめるか否かが決まる」そう言っても良いくらい、アポを取る技術は大切です。テレアポ先任、じゃなくてテレアポ仙人の私が、アポを取る技術を伝授するというのが【自衛官(公務員)のための営業職入門】のメイン・トピックスです。

なぜ、新規営業は楽しいのでしょうか。

それは、給料をもらいながら「宝探しゲーム」ができるのです。むしろリアルなRPGと言っても良いかもしれません。RPG(ロール・プレイング・ゲーム)の人気作と言えばドラクエですが、ロール(Role)とは役割のことです。RPGとは役割を演じるゲームなのです。営業マンは、営業という役割を演じているのです。ドラクエで言えば、営業マンとは勇者です。勇者とは、あきらめない者です。営業マンにとって新規営業とは、ドラクエであり、宝探しゲームなのです。

宝探しゲーム。みなさんも幼い頃、やったことがある人は多いのではないでしょうか。宝探しゲームには、絶対的なルールが一つだけあります。それは、「お宝は必ずある」というルールです。逆に言えば、「あるかないか、わからないけど、たぶんこの部屋に宝物があるよ、見つけたらご褒美をあげるよ」という条件では、誰も本気で探さないでしょう。「必ずこの部屋に宝があります、そしてご褒美はこれです。」という条件だから、目の色を変えて宝を探すわけです。あるかないかわからなくても楽しいのは【おばけのアッチのあるかないかわからないごちそう】という児童書くらいです。

企業は、営業マンを雇った時点で「勝ちパターン」を持っています。つまり、営業マンが電話したり訪問したり文書orメールを送付したりすれば、必ず売上があがるノウハウを持っているのです。つまり、営業マンが動くフィールドには、必ずお宝が存在しているのです。そうでなければ、高い金を払って営業マンを雇ったりしません。繰り返しますが、必ずお宝はあるのです。

営業マンにとっての宝とは何か?実務上は売上をあげることですが、その実績に応じた見返り、つまり給与アップやボーナスには当然、期待しますよね。ゲーム内のお金やアイテム、経験値や能力を現実社会に持ち出すことはできません。しかし営業の場合は、自分がフィールドを歩き回り、人に会って案件を引き出して提案することで経験値が上がります。受注すれば称賛され、給料も上がり、ボーナスというお宝をもらえます。

金銭的な報酬に加えて「人脈」と「自信」を得ることもできます。これは金銭と同じくらい価値があると思うのです。

営業マンが人脈をつくりやすいのは、たくさんの人と会うからです。法人営業の場合は、相手方担当者と仲良くなれることも多いです。これは、共に課題解決に向けて汗をかく、いわば戦友のような関係になるからです。私がうつ病になって休職したのは6年以上前のことですが、年賀状をきっかけとして、かつての顧客の方々と再会することができました。

人が生きていく上で、自信は大切です。自信とは、困難なことにチャレンジすることで、徐々に蓄積されていくものだと思います。著書【思いをつなぐ 英語で学ぶ、日本の矜持。】の謝辞にも書きましたが、営業マンとして積み重ねた日々が、私にとって自信となりました。うつ病となり、希死念慮で苦しみ、消えてしまいたい自分、自分になんの価値もないと思ってしまう、自己不在や自信不足で苦しんでいました。苦しい時でも、ふと営業マンとしての日々を思い出し、「ああ、自分は今まで、がんばって生きてきた。そんなに自己否定することもないか。」と自分を取り戻すことができました。新規営業とはゼロをイチにする仕事です。この積み重ねがあったからこそ、私は希死念慮に負けずに生きていられたのかもしれません。

上記の文章を書きながら、ふとイザベラ・バードの言葉を思い出しました。【思いをつなぐ 英語で学ぶ、日本の矜持。】の59ページで紹介している言葉です。【あれだけの障害をすべて征服してきたことに、私は今、いささかの勝利の喜びを覚えている。この喜びを、単なる自己満足にすぎぬとは誰にも言えまい。出発のとき、やり遂げたいと願っていた以上のことを、確かに私は今やり遂げたのだ。】という言葉です。著書では、英語原文も紹介していますので、ご一読くださると幸いです。

この言葉は、厳しい訓練に立ち向かう自衛官や警察官の皆様にこそ、共感してもらえるでのはないかと思って収録しました。しかし、自分自身にあてはめて考えますと、簡単にアポイントが取れない大企業に対して何度もアタックし、無事に契約を勝ち取った時、まさにイザベラ・バードのような気持ちを噛みしめていました。

ところで、アポを取ることが得意になると、他にも良いことがあります。それは、「自分でスケジュールを組み立てられる」ということです。「仕事は段取りが8割」とか「仕事に追われるな、仕事を追いかけろ」という言葉がありますが、アポを取る技術をマスターし、自分の都合に合わせてスケジュールを組み立てられるようになると、働きやすくなります。いつも一人で外出しているので、移動時間や隙間時間はのんびり過ごせます。もっとも、調子にのってサボるとすぐに成績が落ちて上司に怒られるので、自制心が大切ですが・・・

このような感じで、第2章では、新規営業の概論を語っていきます。今日はこれで終わります。